2023年05月16日

祭禮ないし祭禮組織の變容

 私は、コロナ下で、祭禮ないし祭禮組織の變容が顕在化すると予想していた。
 実際、先に投降した「若葉祭」のコメントで記したように、若葉祭でも、たった3年の中止で、著しく變容が顕在化しました。
https://tokosabu.dosugoi.net/e1269434.html
 14日午後9時に、NHK総合テレビで放送された「NHKスペシャル」は、「お祭り復活元年〜にっぽん再生への道〜」のタイトルであった。
 「お祭り復活」の文言に、違和感を覚えたし、その違和感の通り、祭禮ないし祭禮組織の變容ではなく、「にっぽん再生への道」が副題になっている。
 取り上げられたのは、国府宮の裸祭、徳島県太鼓台、鹿児島県の初午祭、新潟県の古志の火まつり。
 国府宮の裸祭の裸男は、氏子に限らないし、続く徳島の太鼓台でも、氏子だけでは太鼓台の担ぎ手が足りず、地区内の企業の従業員を動員するというものであった。
 初午祭や火まつりも人手不足(高齢化による)で、存続が困難になり、初午祭では、学生がデジタル配信により観客を増やす、火まつりでは、今年で最後になるものの、仮想空間での観客を増やし、再生につなげるというものであった。
 こんな話は、コロナ下以前から顕在化していたことで、今回わざわざ取り上げるまでもないこと、
 限界集落では、集落出身者が、祭禮の折のみ帰ってきて、祭禮に参加することは、一昔以上前から行われています。
 今回取り上げたのは、単にその手段がデジタル媒体だということだけでした。
 村落共同体が崩壊しても祭禮は存続します。花祭りなどがその例です。
 今回放送が採り上げたのは、祭禮とイベントをごっちゃにしており、副題の「にっぽん再生への道」は、「祭禮がイベントとして再生する過程」というのが正確な表現だと思いました。
 要するに、番組制作者が、実際に祭禮に携わったことのないど素人が、コロナによる3年の中止で、祭禮がどうなったかといった程度の低い番組構成になったと私は理解しました。



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この記事へのコメント
柴田晴廣 様

 小生、その番組を視ておりませんが、確かに、コロナが生活に与えた影響を語りたいがために、無理矢理、祭禮と結び付けた印象がありますね。
 小生の会社がある地域の八幡社の祭禮でも、神輿の担ぎ手が足らず、会社の新入社員に協力を求めたことがありましたが、それも三十年前のこと。現在は知りませんが、状況は変わっていないのではないかと思います。小生、神輿祭に関心が薄く、参加したことはありません。

安達恭史
Posted by 安達恭史 at 2023年05月18日 07:36
安達恭史さま

 番組を要約すれば、人手不足をデジタル媒体で解消するという、安易な発想に基づくものでした。
 牛久保の住人の中にも、若葉祭が、県の文化財指定になったことを単純に肯定的に捉えている者がほとんどですが、文化財保護法は、「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする」(1条)と規定します。
 要は、保護しなければ、存続できないから、文化財に指定されるわけです。
 高度成長期の生活環境等の変化から、祭禮の後継者不足の問題が発生します。
 たとえば、豊橋鬼祭は、高度成長期に入る1954年に、県の無形民俗文化財に指定され、1980年に、豊橋神明社の鬼祭として国の重要無形民俗文化財に指定されます。
 都市部のドーナツ化現象による人手不足です。
 一方過疎化によるものとして、花祭は、1976年に、国の重要無形民俗文化財として指定されます。
 花祭りの人手不足解消法は、元住民の参加等、村落共同体から離れての存続。
 各地の祭禮の保存会も、村落共同体とは別の形での存続になり、氏子ん祭から保存会の祭りへと変容しております。
 東京の御輿(神輿ではない)祭の担ぎ手は、住民とはかけ離れたものです。
 村落共同体が崩壊しておらず、祭礼が氏子組織から離れる前は、祭礼費用は氏子が負担し、その支出は、村落共同体に還元されたという、祭禮が富の再分配の役割をはたしておりましたが、祭禮組織が氏子から離れれば、地域の再生には、直接つながらないと、思います。
 この問題をどう解決するかを、番組では深く掘り下げるべきだったと思います。
Posted by 柴田晴廣柴田晴廣 at 2023年05月18日 09:30
柴田晴廣 様

 先週末は神田祭、今週末は浅草三社祭です。神輿を担ぐ氏子衆はもとより、近隣から神輿を担ぎたがる連中が集まってきます。聞くところによれば、氏子以外の者が神輿を担ぐことを嫌うそうですが、法被を貸してもらって担がせてもらっている様です。
 浅草三社、4年ぶりで今年は人出がすごいそうです。しかし、折しもG7サミットが広島で開会中。都内も特別警戒態勢が敷かれており、三社の宮入で参加できるのは氏子だけと、制限が設けられているそうです。
 6月最初の週末は、荒川の天王祭。その次の週末は鳥越祭と、神輿ファンには刺激的な週末が続きます。
 小生は神輿を担ぐよりは飲食しながら見物する方が好きですから、天王祭では、町屋駅前の行きつけの呑み屋で、香具師のまねごとをして焼鳥焼いて売ります(ただの手伝い)。ちなみに、町屋駅前近くに原稲荷神社があり、ここが御旅所となっております。

安達恭史
Posted by 安達恭史 at 2023年05月21日 09:05
安達恭史さま

 東三河では、6月には祭禮がない。
 曾祖父は、それで、6月に札木で夜店を始めました、
 当時打ちは、札木の一部になっていた利町にありました。

 本当にい嫌っているなら、名前を忘れましたが、町火消の後継団体を招待しちゃだめですよ。
Posted by 柴田晴廣柴田晴廣 at 2023年05月21日 12:04
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