2018年10月04日

前回の続き(オプジーボについて)

 確認はしていませんが、オプジーボの特許権は小野薬品が所有していると思います。
 そして小野薬品はその特許権に基づいて国内で独占的にこのオプジーボの製造販売を手掛けているのでしょう。
 さて、特許法には、裁定による通常実施権という制度があります。いわゆる強制的実施権の設定です。
 その裁定による通常実施権の中で「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」の規定が特許法93条に規定されています。
 その公共の利益のための通常実施権の設定の裁定について規定する特許法93条ですが、1項「特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる」と規定します。
 つまりオプジーボという特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、そのオプジーボの実施をしようとする製薬会社等は、特許権者である小野製薬等に対し通常実施権の許諾について協議を求めることになります。
 もちろん、小野薬品が実施権の設定又は許諾をするとは限られません。
 ところが、オプジーボの実施が公共の利益のため特に必要であると認められるときに、小野製薬が実施権の設定又は許諾をしないことにより、特許法の目的(1条)であるい産業の発達を阻害することになれば、問題でしょう。
 そこで、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定について規定する93条2項では、「前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる」と規定します。
 先に書いたように、現時点では本庶何某の研究に基づくがん治療薬は、「遅い、高い、まずい」の別段画期的なものではありませんが、これだけマスコミ等が画期的と騒げば、特許法93条1項に規定する「公共の利益のために特に必要であるとき」に該当するとして通常実施権の設定の裁定がされる可能性が高くなります。
 実は、裁定による通常実施権という制度は、制度があるだけで、実際に裁定の請求がされたことはありません。
 しかし、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定について規定する特許法93条では、同法86条を準用する旨を規定しており、その特許法86条2項では、柱書で「通常実施権を設定すべき旨の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない」と規定し、同項号で「通常実施権を設定すべき範囲」、2号で「対価の額並びにその支払の方法及び時期」と規定しています。
 2号の対価の額とは所謂ロイヤリティーのこと、小野薬品自身がその対価の額を定めるわけではありませんから、当然、小野薬品の思惑よりかなり低額に設定されます。
 裁定が請求されないものの、この規定により、伝家の宝刀の役割を果たしているわけです。
 今回のノーベル賞受賞、それに伴う報道により小野薬品は、競合他社に対して、通常実施権の許諾をせざるを得なくなり、オプジーボの価格はどんどん低下することになります。
 また競合他社の参入により、効果は当然向上することになります。
 これは、オプジーボに留まるものではなく、近赤外光線免疫療法などの他のより優れたがん治療にも波及すると思われます。
 本庶何某の研究については、アイデアに毛が生えた程度(アイデアのみでは特許は取得できない)のものですが、他者が、より優れた発明として完成させる可能性のきっかけになったように思えます。

 当然のことですが、通常実施権の許諾により競合他社が参入すれば、小野薬品の業界での優位性は低下しますから、当然、株価は下がります。
 株屋は、何年だから景気がいいの悪いのと風が吹けば桶屋が儲かる程度のがん治療の標準ガイドラインのごとく根拠のないものに基づいて株価の話しかできないわけですから、こうした思考は出来ないと思いますが



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Posted by 柴田晴廣 at 07:28│Comments(0)雑談
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