2017年09月06日
Bespoke

ビスポークで仕立てた半袖のシャツ四点です。
上の二点と、下の左はインディアン・マドラス。
マドラスは、南インドの東側コロマンデル海岸沿いのベンガル湾に面するタミル・ナードゥ州の州都・チェンナイのことで、1640年から1996年までマドラスと呼ばれていました。
コロマンデル海岸辺りは、サントメとも呼ばれておりました。このサントメから輸出された綿織物が桟留縞です。
縞という言葉は、嶋から渡って来たものを指していたわけで、ストライプをいうわけではありません。歌舞伎模様の三津五郎縞はチェック(格子柄)です。ストライプ柄をいうときは、「スジ」です。格子縞なんて言葉もあるぐらいですから、江戸時代にもマドラスチェックは高級品として入ってきていたんです。
弁柄縞なんていうのも産地に由来するもので、現在のバングラディシュ、ベンガルから渡って来た綿織物をいいます。
ストライプ柄の桟留は絹を制限されていた町人に人気が高く、三河木綿とか遠州木綿のストライプ柄は桟留を真似して作ったもので、模造品が出回ると本家桟留は唐桟と呼ばれるようになります。
シャツの話に戻ります。オーダーメイドは和製英語でして、注文で作ったものはビスポークといいます。
襟はオープンカラーで、第一ボタンはループ掛けにしてあります。
ボタンはマドラスのものは水牛。グレナカートチェックのものは、生地は国産の麻百。ボタンはタグア・ナッツです。
ボタンはザンパテグリアート(鳥足掛)で付けてあります。
グレナカートチェックを含め、仕立てたばかりのころは、色が濃かったんですが、ブリーディング(色泣)して落ち着いた風合いになってきました。
私は既製品が合わない体型ではありません。なぜビスポークか。
好みのものが既製品にはないということと、やはり柄合わせでしょうか。
国産のものは、アメリカ製などの雑な製品と比べ、柄合わせはきれいです。
そのうち本筋の『牛窪考(増補版)』の概要の解説でも書くと思いますが、首抜きの着物などの伝統があるからでしょう。
和彫りの「額」なんて手法も首抜きに通じるものがあります。
長板染めもこの流れでしょう。私も表が筋の長板染めの浴衣を二枚もっていますが、筋がぜんぜんずれていなくて、そりゃあきれいですよ。
既製品のシャツの話に戻せば、アメリカ製などの雑な製品より柄合わせはきれいだとはいえ、既製品ゆえの限界もあります。
私は特に前後の身頃はもちろんのことですが、ヨークと後身頃、これが一体になるように柄合わせをしてもらいます。高価な国産のものでも、既製品はここまでのこだわりはありません。自分が何を求めているのかがはっきりわかっていれば、高価な既製品を買うより、よっぽど安価で納得行くものが仕立てられます。
ついでにいえば、私はドレスシャツなども昔はビスポークで仕立てていました。生地はシーアイランドコットン(海島綿)。汚れなんていうのは、糸を紡いだところにつきやすいのですが、シーアイランドコットンは、毛足が長いから汚れが付きにくい。番手が高いから糊付けなんかすると、一発でダメになりますが、やっぱり違います。
私が一番理解できないのがボタンダウンシャツっていうやつ。大体後身頃の中央にプリーツなんか取ったって、機能的に意味はないし、柄物、特にストライプは柄合わせが汚なくなります。機能はない、柄合わせも汚い。なんであんな見苦しい機能を無視したデザインのシャツを買う人がいるんでしょうか。きっと、首抜きとか長板染めとか知らないんでしょうね。
もっともドレスシャツなんていうのは、下着ですから、大体上着を脱いでシャツにネクタイなんていうのは、本来あり得ない話なんですけどね。だから私はビスポークのドレスシャツには胸ポケットをつけません。
ただ、機能を考えれば、肩甲骨の一番出っ張ったところにギャザーを寄せてもらう。これがやはり動きやすい。
仮になんかの拍子に上着を脱いだときでも、後ろから見たときの柄がきれいに現れます。
Posted by 柴田晴廣 at 06:05│Comments(0)
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