2022年01月23日

穂国幻史考(増補新版)の手引き

 昨日の投稿で、『穂国幻史考(増補新版)』を販売目的で刊行予定していること、そしてその『穂国幻史考(増補新版)』の理解の一助となるように、「『穂国幻史考(増補新版)』の手引き」を執筆しており、本年に入ってから連続投稿していた「『牛窪考(増補改訂版)』の内容の説明」は、その草稿である旨を記した。
 当然のことであるが、『穂国幻史考(増補新版)』自体にも「はしがき」「あとがき」を記している。
 その「はしがき」の草稿は以下の如く。


 本稿は、四千四百頁餘にも及んだ『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』の理解の一助となるよう、『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』が、何を明かす目的で、どういった視点で、どういった手法で、どう明かしたかを記したものである。
 なお『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』と、その基となった二〇〇七年刊行の『穂(ほ)国幻(こくげん)史(し)考(こう)』では、なぜにルビが異なっているかについては、『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』第三話「牛窪考」附録一「相撲雑話」の序「本書第一話における野見宿禰論」で説明してある。

「はしがき」では、二〇〇七年刊行した『穂(ほ)国幻(こくげん)史(し)考(こう)』をなぜに、加筆改定して、『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』として刊行することとしたのかの説明とともに、最初から順に読み進めて頂きたい旨のお願いを記した。
 なぜ最初から順に読み進めて頂きたいか。
 それは、たとえば、半村良(一九三三~二〇〇二)の代表作でもある長編伝奇小説『妖星伝』(「小説CLUB」に一九七五年九月号から連載を開始し、単行本巻一から巻六(鬼道の巻、外道の巻、神道の巻、黄道の巻、天道の巻、人道の巻)までを一九八〇年までに刊行、その後、「小説現代」で連載再開し、一九九三年に単行本巻七(魔道の巻)を刊行して完結)は、当然、巻一「鬼道の巻」のある場面が巻三神道の巻のある場面の話の展開の伏線になっているなど、途中から読んでも、筋はわからない。伝奇小説とはそういうものだ。
 伝奇小説の伝奇とは、實在する傳説やその上位概念である傳承に見られる「幻想の存在」を扱った物語をいう。『穂国幻史考(増補新版)』は、洗脳による過誤記憶が共同幻想へと昇華し、史實と化した事象を考察の對象とする。ゆえに「幻史考」なのだ。その意味で、『穂国幻史考(増補新版)』は、紛れもない傳奇ものといえよう。
 長編伝奇小説『妖星伝』と同様に、傳奇ものの『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』も、各稿が独立したものではなく、先行する論考を前提に、たとえば第一話「記紀の成立と封印された穂国の実像」のある話を前提に第三話「牛窪考」でのある話を展開している。加えて『穂国幻(ほのくにげん)史(し)考(こう)(増補新版)』の各稿で、通説を単になぞって、穗國の歴史を語ったものなど一つもない。さらに、通説をなぞろうにも、第三話「牛窪考」拾遺一「「若葉祭(うなごうじ祭)」の起源と豊川流域の「笹踊」」補遺三「「隱れ太鼓」考」で採り上げた「隱れ太鼓」のように、先行する研究が全く存在しないものもある。興味のあるところから拾い読みしても、理解するには、結局最初から読み直すことになるだろう。ゆえに無駄な時間と労力を省けるようにと、最初から読むことを促したのだ。
 そして「はしがき」では、正字を使っていた時代の出來事については、正字を使って表記した。時代劇で、セリフを現代語にすれば、その時代に同化出来ない。略字を使っては、同じように時代に同化出来ないだろう。正字の使用により、先人の感覺と同化(後述する対幻想)することが容易になり、その時代がより再現出來るからである。



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Posted by 柴田晴廣 at 07:50│Comments(0)穂国幻史考
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